Je veux me remplir
3月に大学を卒業して、4月から新社会人となった。
これまでの1ヶ月を振り返ってみると、規則正しく生きていくのに精いっぱいだったように思う。朝早く起きて満員電車に揺られ、会社ではへらへらしながらぬるま湯のような研修を受ける。お昼は同期と毒にも薬にもならない話をしながらごはんを食べ、飲み会ではセクハラと人種差別発言を繰り返す上司を軽蔑して、また満員電車に揺られて帰る。お風呂に入って、特に何をするわけでもなく早めに寝る。その繰り返し。
脳みそが腐りそうだ。何も生み出さず、何も考えずに毎日を消費しているという自覚があるから尚更つらい。そしてこのどうしようもない毎日ですら気疲れしてしまって、心がいっぱいいっぱいなのだ。おまけに初任給は5月25日だし。
金曜の夜と土曜はだいたい映画や演劇、バレエ、オペラなどを観に行っている。もともと芸術鑑賞は好きだったものの、最近は何かに追い立てられるように足を運んでいる。きっと自分のなかにぽっかりとあいた、自分では満たすことのできない空洞を、芸術を摂取することによって満たしたいのだ。なんというか、我ながら不毛だ。
こういう虚無感って、新入社員はみんな感じるものなのだろうか。
Je suis vide dit Jacquemort, je n’ai que gestes, réflexes, habitudes. Je veux me remplir. C’est pourquoi je psychanalyse les gens.
Boris Vian "L'arrache coeur"
わたしは空なんです、とジャックモールは言う。私には身振り、反射、習慣しかありません。わたしはわたしを満たしたいのです。だからわたしはひとびとを精神分析するのです。
ボリス・ヴィアン『心臓抜き』拙訳
ジャックモールはひとびとを精神分析するけれど、わたしはわたしを精神分析するためにこれから日記を書こうと思う。